月次報告の資料は、毎月ほとんど同じ形をしています。表の枠も、グラフの種類も、ページの並びも先月と同じです。違うのは数字と、コメントの数行だけ。それでも担当者は毎月、先月のファイルを開いて数字を1つずつ打ち直しています。

9月28日(米国時間)に公開された Claude Sonnet 5.5 は、Anthropic が得意分野として「文書・スライド・表計算の作成」を挙げたモデルです。ITmedia の報道では、公開日から無料プランでも使えます。この記事では、先月の完成資料を見本として渡し、今月の数字に差し替えた資料を無料の Claude に作らせる手順を書きます。数字の検算と送付は、人の仕事として残します。

無料プランで何が作れて、何が要るのか

テラコッタ/ブラウンを基調にした概念図。机の上に、一冊の先月の報告書と、走り書きの今月のメモが並んで置かれている。二つが一つのチャット窓に吸い込まれ、窓の反対側から表計算の紙、スライドの紙、文書の紙、綴じた冊子の四種類の資料が扇形に出てくる。出てきた資料の形は先月の報告書とそろっている。文字・数字・ロゴは一切描かない。

チャットからファイルを作る機能自体は、Sonnet 5.5 で新しく入ったものではありません。Anthropic の Help Center によると、コード実行とファイル作成は Free・Pro・Max・Team・Enterprise のすべてのプランで、Web版・デスクトップアプリ・スマホアプリから使えます。無料プランに開放されたのは2026年2月です。2月から無料でできていることを、今回の新モデルで試す、という順番になります。

  • 作れるファイル:Excel(.xlsx)、PowerPoint(.pptx)、Word(.docx)、PDF
  • ファイルの上限:アップロード・ダウンロードとも1ファイル30MB
  • 保存先:会話画面からダウンロードするか、Google ドライブに直接保存する
  • Excel:Help Center は「計算式が動く状態の表」を作れると説明している

使う前に設定を1か所確かめます。Help Center では、無料・Pro・Max プランはこの機能が初期状態で有効とされ、同時に「Settings の Capabilities で Code execution and file creation をオンにする」とも案内しています。スマホアプリでは、左のメニューで自分の名前をタップして設定を開き、Capabilities から切り替えます。日本語表示の画面でどう訳されているかは確認できていないので、英語の項目名を頼りに探してください。

Excel や PowerPoint の中で Claude を呼び出すアドインもありますが、こちらは有料プラン向けです。この記事の手順は、通常のチャット画面にファイルを添付するやり方だけで完結します。

手順:先月の完成資料を「見本」として渡す

テラコッタ/ブラウンを基調にした概念図。左に、ページの並びや表の枠がはっきり見える先月の完成資料が型紙のように置かれている。右に、同じ型紙に沿って新しい資料が組み上がっていく。新しい資料の表の一部のマスからは細い糸が伸び、隣に置かれた元データの帳面につながっていて、どのマスがどこから計算されたかたどれる。文字・数字・ロゴは一切描かない。

ゼロから「月次報告を作って」と頼むと、構成もグラフもAIの好みで組まれます。先月の完成資料を1つ渡すと、構成を決める作業が要らなくなります。手順は3つです。

1. 先月の完成資料と今月の数字を、まとめて添付する

先月提出した PowerPoint か Excel を1つと、今月の数字が入った表(CSV や Excel)を同じメッセージに添付します。今月分のコメントの材料があれば、箇条書きのメモで足します。見本は1か月分だけにします。複数の月を混ぜると、どれに合わせるかをAIが迷います。

2. 「同じ構成で、数字だけ差し替えて」と頼む

頼み方は次のとおりです。

添付の「先月の月次報告」と同じ構成・同じ体裁で、今月の数字に差し替えた資料を作ってください。数字は添付の「今月の数字」だけを使ってください。合計・前月比・構成比など計算で出した値は、Excel の計算式として残してください。元データにない数字は推測で埋めず、空欄にして一覧で教えてください。コメント欄は、メモにある内容だけで下書きしてください。

肝は「計算式を残して」の一文です。計算結果だけが貼られた表は、どこで間違えたかを人が追えません。計算式が残っていれば、セルを1つクリックするだけで、どの数字から出した値かが分かります。「推測で埋めない」の一文も外さないでください。元データに無い項目があると、AIはもっともらしい数字で穴を埋めることがあります。

3. 元データと突き合わせてから、体裁だけ直させる

返ってきたファイルを開いたら、見た目を整える前に数字を確かめます。確かめるのは次の3か所です。

  • 元データから写しただけの数字:売上や件数を、元の表と数か所ずつ見比べる
  • 計算式:合計と前月比のセルを開き、参照している範囲がずれていないか見る
  • 空欄の一覧:AIが「元データにない」と挙げた項目を、人が埋めるか削るか決める

数字が合ってから、「グラフの色を先月と同じにして」「3ページ目の表を1枚に収めて」のように体裁だけを直させます。順番を逆にすると、直した体裁の上で数字の誤りが見つかり、同じ直しを2回することになります。

渡す前と、返ってきた後の二つの関所

テラコッタ/ブラウンを基調にした概念図。報告書の束が一本の通路を左から右へ流れていく。入口の門で、書類の一部に目隠しの帯がかけられる。中央ではAIの作業台が新しい資料を組み立てる。出口の門には、そろばんと虫めがねを持った人が立ち、元の帳面と見比べて承認の印を押した資料だけが、右端の封筒に入って送り出される。文字・数字・ロゴは一切描かない。

月次報告には、顧客名や単価、取引先ごとの売上が並びます。無料で気軽に使える分、ルールを決めないまま使い始める人も出てきます。使い始める前に、社内で次の二つを決めておきます。

  1. 入口:顧客名・個人名・単価は、「A社」「単価X」のような伏せ字に置き換えてから添付する。社外に出せない資料は、クラウドのAIに渡さない
  2. 出口:AIが作ったファイルは下書きとして扱う。数字は元データと人が突き合わせ、送付先と送付の判断は人が行う

もう一つ、Help Center には注意書きがあります。外部のファイルやWebサイトに紛れ込ませた指示で、AIがだまされて情報を外に送ってしまう危険です。社外から受け取ったファイルを添付するときは、作業中の画面を見ておき、想定外のデータに触れ始めたら止めてください。

作るのはAI、確定するのは人。月次報告は毎月くり返すので、最初の1回でこの線を引いておけば、翌月からは同じ手順を回すだけになります。

向く資料、まだ分からないこと

この手順が効くのは、構成が毎月変わらない資料です。売上や問い合わせ件数の月次報告、店舗別の集計表、定例会議のスライドがこれに当たります。反対に、毎月の論点が入れ替わる報告や、数字の解釈そのものが要るコメントは、見本を渡しても手間は大きく減りません。コメントはAIに下書きさせ、判断の中身は人が書き足してください。

  • 無料プランで1日に何回まで使えるか、大きなファイルを添付したときに回数の上限へどれだけ早く届くかは、公式ページでは確認できませんでした
  • 設定画面の日本語での項目名は未確認です。英語の「Code execution and file creation」で探してください
  • Sonnet 5.5 が文書・スライド・表計算を得意とするのは Anthropic 自身の説明で、第三者の検証はこれからです

用意するのは、先月の完成資料1つと今月の数字だけです。今月末の報告を1本、この手順で作ってみてください。数字を打ち直していた時間が、計算式を確かめる時間に置き換わります。

出典:Anthropic「Claude Sonnet 5.5」/ITmedia NEWS/Simon Willison/Claude Help Center「Create and edit files with Claude」/9to5Mac