ChatGPTで作ったコピー、画像生成AIで出したバナー。社内で当たり前に使い始めた会社は多いはずです。ただ、いざお客様向けのチラシやSNS投稿に載せる段になって「これ、そのまま商用で使って本当に大丈夫?」と手が止まる。そんな相談がこの半年で増えました。この記事では、生成AIと著作権の論点を「作る段階」と「使う段階」に分けて整理し、中小企業が今日から回せる社内チェックの形まで落とし込みます。IT専任者がいない会社でも運用できる粒度で書きます。
トラブルは「作る時」ではなく「使う時」に起きる

生成AIの著作権は、大きく2つの段階に分かれます。ひとつはAIに学習させる段階。もうひとつは出てきた生成物を使う段階です。この2つを混ぜて考えると話がこじれます。
学習させる段階については、日本の著作権法30条の4が広めの例外を認めています。AIの開発・学習のために著作物を使うこと自体は、一定の条件下で権利者の許諾なしにできる、という建て付けです。ここを根拠に「日本はAI学習に寛容」と語られることが多い。
問題が起きやすいのは、むしろ次の段階です。AIが出してきた画像や文章が、世の中の既存の作品と「似ている」うえに、その作品に「依拠して」作られたと判断されると、通常の著作権侵害と同じ土俵に乗ります。判断の軸は類似性(表現が似ているか)と依拠性(元の作品を下敷きにしたか)の2つです。
ここで大事な区別があります。「◯◯風のイラスト」といった作風・画風の指定そのものは、著作権上の類似性には直結しません。著作権が守るのは具体的な表現であって、作風やアイデアは守られないためです。引っかかるのは、特定の作品やキャラクターの創作的な表現そのもの(具体的な絵柄・構図・キャラクターの造形)を再現してしまったケースです。「有名キャラを出して」とプロンプトで狙うのは危ない、「水彩タッチで」は作風指定にすぎない——この線引きを社内で共有しておくと判断がぶれません。
AIが作った画像は、自社の権利にはなりにくい
もうひとつ押さえておきたいのが、生成物そのものは著作権が発生しにくいという点です。著作権は「人間が創作的に表現したもの」を守る制度なので、プロンプトを入れてAIが自動で吐き出しただけの画像は、自社の著作物として守りにくい側面があります。
これは実務ではこう効いてきます。たとえばAIで作ったロゴやキャラクターを自社の看板商品にしても、他社が似たものを使ったときに「それは当社の著作物だ」と主張しづらい。ロゴやブランドの核になる部分をAI一発生成で済ませるのは、この意味でリスクがあります。筆者(ククルデザイン)は、ブランドの中心に置くビジュアルは人の手を入れた制作物にすることをおすすめしています。
「商用OK」は規約と著作権の両方を見る

「AIで作ったんだから自由に使える」は誤解です。商用利用の可否は、独立した2つの関門を両方クリアして初めて判断できます。
ひとつ目の関門は、使ったツールの利用規約です。ChatGPT・Claude・Gemini・Microsoft Copilot、そして各種の画像生成サービスは、生成物の権利の扱いや商用利用の条件がそれぞれ違います。無料プランと有料プランで条件が変わるサービスもあります。導入時に規約を1度読んで、商用可否と禁止事項をメモしておく。ここは事故を減らす基本です。
ただし、規約で「商用OK」となっていても、それだけで安全とは言えません。もうひとつの関門である第三者の著作物との類似性・依拠性は、規約とは別に残ります。規約はあなたとツール提供者の間の契約であって、第三者の権利を消してくれるわけではないからです。規約の確認と著作権侵害の確認は、どちらかで済む代替関係ではなく、両方必要だと考えてください。
中小企業がまず整える社内ルール3点
むずかしい法律論を全社員に覚えさせる必要はありません。文化庁が公開しているAIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンスを土台に、自社の運用に落とすと3点に絞れます。
- 入力してはいけない情報を決める — 顧客の個人情報、取引先の機密、未公開の社内資料はプロンプトに貼らない。まずここを禁止事項として明文化します。
- 使ってよいツールを限定する — 誰が何を使ってもいい状態をやめ、会社が規約を確認したツールだけを許可リストにします。無料の新サービスを各自が勝手に業務利用しない、という線引きです。
- 公開前に類似チェックを1回はさむ — 納品物・広告バナー・SNS画像を外に出す前に、似た既存作品がないかを確認する担当と手順を決めます。Google画像検索などで元ネタらしき作品がないか見る、特定の作品・キャラクターを狙ったプロンプトを使っていないか振り返る、といった一次チェックです。
ひとつ注意しておきます。このチェックを回したからといって、侵害の可能性がゼロになるわけではありません。文化庁も、チェックリストの実施が法的責任を必ず回避することを意味しない、と明記しています。画像検索は確認手段の一例にすぎず、心配な案件は専門家に相談する、という逃げ道も残しておくべきです。それでも、公開前に人の目を1回通す仕組みがあるだけで、明らかに危ない使い方はかなりの割合で止められます。
たとえば従業員20名のサービス業なら、「入力禁止リスト1枚」「許可ツール一覧1枚」「公開前チェック担当1名」から始めれば十分に回ります。完璧なマニュアルより、まず回る仕組みが先です。
まとめ
- 著作権の論点は「学習させる段階(30条の4の例外)」と「生成物を使う段階(類似性・依拠性)」に分かれ、トラブルは主に後者で起きる。
- 作風・画風の指定そのものは類似性に直結しない。危ないのは特定作品・キャラクターの創作的表現を再現したとき。
- AI生成物は自社の権利として守りにくい。ロゴやブランドの核は人の手を入れる。
- 商用可否は「利用規約」と「第三者著作物との類似性・依拠性」の両方で判断する。片方だけでは足りない。
- 社内ルールは「入力禁止情報」「許可ツール」「公開前の類似チェック」の3点から始める。ただしチェックしても侵害リスクはゼロにはならない。
筆者は、生成AIで「作れる」ことと「安全に使える」ことは別物だと考えています。作る力はもう十分に手に入りました。あとは公開前の一次チェックを仕組みにするかどうか。ここを整えた会社から、AIを安心して業務に組み込めます。
ククルデザインでは、群馬県内の中小企業さま向けに、生成AIの社内ルールづくりやデザイン制作のご相談を承っています。「うちの使い方は大丈夫か一度みてほしい」といった段階のご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。



