9月22日、スマートフォンで知られるXiaomi(シャオミ)が、AIモデル「MiMo-V2.6」を公開しました。上位版のProは総パラメータ1.02兆。第三者機関Artificial Analysisの総合指数で46点を取り、重みを公開しているモデル(オープンウェイト)の中で首位に立ちました。それまで首位だったGLM-5.3とKimi K3は44点です。
ライセンスはMIT(改変も商用利用も自由なライセンス)。つまり、ChatGPTやClaudeのように相手のサーバーへ文章を送らなくても、同じ系統の性能を自社で抱えられる道が一段広がったことになります。群馬の中小企業にとって、これは「どのAIが賢いか」より「機密の書類をどこで処理するか」の話です。
何が公開されたのか

今回出たのは大きく3種類です。
- MiMo-V2.6-Pro:総1.02兆パラメータ、1回の処理で実際に動くのは420億。文脈は100万トークンまで扱え、テキスト・画像・動画・音声を入力できる
- MiMo-V2.6-Flash:総3,090億パラメータ、動くのは150億。Proより軽く安い版
- MiMo-V2.6-Distill-Qwen-9B:90億パラメータの小型版
重みはHugging Face(AIモデルの公開サイト)で配布され、APIはXiaomiの自社基盤とOpenRouter(複数のAIをまとめて呼べる中継サービス)から使えます。OpenRouterでのFlashの料金は100万トークンあたり入力0.14ドル、出力0.28ドル。Proは入力0.435ドル、出力0.87ドルと報じられていて(Unite.AI)、Xiaomiは前世代のV2.5から価格を据え置いたと説明しています。
もう一つ目を引くのが、学習の中身まで出した点です。強化学習の枠組みと7,000件超の課題環境が一緒に公開されました。重みだけ配って作り方は伏せるモデルが多い中で、ここまで開けたのは珍しい部類に入ります。
「首位」をどこまで信じるか
46点という数字は、Artificial Analysisが10種類の評価を束ねた指数(v4.3系)で出たものです。Xiaomiの自己申告ではなく、第三者が測っています。この点は信用してよい材料です。
ただし首位は「重みを公開しているモデルの中で」の話です。プログラミング課題のDeepSWEでは、ProはClaude Opus 5やGPT 6 Astraに2点ほど届いていません。最先端のクローズドモデル(重み非公開のモデル)に並んだわけではなく、背中がはっきり見える位置まで来た、と読むのが正確です。
筆者が気になっているのは差の縮まり方です。同じ週にクローズド各社が値下げを発表し、オープン側は性能を上げてきました。高い料金を払って外に出すか、少し性能を譲って手元で動かすか。その天秤の目盛りが、この1週間で両側から動いています。
中小企業にとって何が変わるか

Proそのものを社内に置く話ではありません。1兆パラメータ級を動かすにはGPU(AIの計算に使う半導体)を何枚も積んだサーバーが要り、従業員30人の会社が事務所に置く規模を超えています。現実的な使い道は次の二つだと筆者は考えています。
- 国内クラウドや閉じた環境に載せる:重みが手に入るので、取引先の図面や見積のように「海外のAIサービスには送れない」書類を、契約で管理できる環境の中で処理する設計が組める
- 9Bの小型版を社内で試す:90億パラメータなら、GPUを積んだ机上機1台で動かせる大きさです。議事録の要約や問い合わせの下書きなど、最先端の性能が要らない定型作業から試せます
当社がAI導入の相談を受けると、最初に止まるのはたいてい性能ではなく「このデータ、外に出していいんですか」という一言です。社外秘を扱う業務ほどAIの効き目は大きいのに、そこだけ手作業に残る。重みを公開したモデルの性能が上がるほど、この穴を埋める選択肢が増えます。
使う前に確認すべきこと

ここは飛ばさないでください。MIT ライセンスで自由に使えることと、自社の業務に使ってよいことは別の問題です。
- 取引先の利用方針:官公庁や大手の下請けでは、中国企業が開発したAIの利用を契約や調達の方針で制限している場合があります。重みを手元で動かせば通信は外に出ませんが、「どこの国の誰が作ったモデルか」自体を問う方針もあります。使う前に取引先の条件を読んでください
- 開発元の係争:Anthropicは9月10日の脅威レポートで、Xiaomiを含む中国の7つの研究所がClaudeの出力を収集していたと指摘しました。V2.6公開より前のレポートで、V2.6そのものを名指しした告発ではありません。Xiaomiはこの指摘に回答していません(The Next Web)。係争中の事実として、社内で説明できるようにしておくと後で困りません
- APIで使うならデータの行き先:OpenRouterやXiaomiのAPI経由で呼ぶ場合、文章は相手のサーバーに送られます。「オープンモデルだから安全」とは限りません。機密を載せるのは、自社で管理できる環境に重みを置いたときだけにしてください
もう一つ、出力の扱いは他のAIと変わりません。要約も下書きも、送信や金額の確定の前に人が原本と照らし合わせます。作るのはAI、確定するのは人。これは手元で動かすモデルでも同じです。
今週できる一歩
いきなりサーバーを買う必要はありません。社内でAIに「任せたいのに外に出せない」業務を1つだけ書き出してみてください。見積の突き合わせでも、図面の読み取りでも構いません。その業務の機密の度合いと月の件数がわかれば、9Bを机上機で試すべきか、国内クラウドにProを載せるべきか、あるいはクローズドモデルの法人契約で足りるのかを判断できます。
当社では、この切り分けから一緒に進めています。9月22日の公開で、外に出さない側の選択肢が1つ増えました。取引先の方針を確かめてから、1業務で試してください。
出典:Xiaomi MiMo公式発表/Unite.AI/Times of AI/OpenRouter(MiMo-V2.6-Flash)/The Next Web



