現場で撮った写真を工種ごとに振り分け、撮影順に並べ、台帳に貼る。現地調査のメモを、あとで調査シートに清書する。この「記録の仕事」が現場の負担として長く残ってきた。建設業クラウドのCONOCが2026年9月1日、その記録を肩代わりするAIエージェントを2本出した。名前は「ゲンバフォトAI」と「ゲンチョウAI」。群馬で建設・工務店の顧客を持つ当社の目線で、何ができて、使う前に何を決めておくべきかを整理する。
まず、何が始まったのか
CONOCは建設事業者777社超が使う建設業クラウドだ。今回の2本は、CONOCがAI開発基盤に強みを持つJAPAN AIと共同開発したAIエージェントの第1弾にあたる。両社は2026年3月31日に資本業務提携を結んでいる。JAPAN AIがCONOCへ出資し、事業連携で開発体制を固めた形だ。製品を提供する主体はあくまでCONOC、その技術基盤と出資を担うのがJAPAN AI、という役割分担になる。
動く場所は「JAPAN AI STUDIO」の上で、ふだん使うCONOC建設業クラウドの画面に置いたボタンから移動して使う。CONOCは今回の2本を皮切りに、AIエージェントを2026年度内に順次投入していくとしている。資本業務提携を発表したときには、2026年度内に16のAIエージェントを投入する計画も掲げていた。

2つのAIは、具体的に何をするのか
ゲンバフォトAI(現場写真の整理)
現場で撮った写真をアップすると、工種、施工前・施工中・施工後といった撮影タイミング、撮影対象をAIが判定する。工事黒板に書かれた内容も読み取る。判定結果をもとに、工種ごとのフォルダ分け、撮影順の並べ替え、台帳への貼り付けまでを自動でこなし、写真台帳を作って出力する。これまで人が一枚ずつ振り分けていた手作業が、ほぼ消える。
ゲンチョウAI(現地調査の記録づくり)
現地調査の音声録音と手入力の情報から、調査シートの下書きを作る。調査項目のうち記録されていないものを見つけて示すので、確認漏れを防げる。仕上がった調査シートはExcelかPDFで出力できる。初期の対象は、工務店と内装・リフォーム工事を手がける事業者だ。
2本に共通するのは、CONOCが掲げる「入力ゼロ、確認だけ」という考え方だ。AIが記録の下書きを作り、人はそれを確認するだけにする。ゼロから作業する場所を減らし、判断だけ人が残す。この線引きが、そのまま使いこなしの勘所になる。

なぜ群馬の建設・工務店に刺さるのか
建設業のDX導入率は20.7%、AI活用率はわずか9.4%にとどまる(前者はIPA『DX白書』、後者は帝国データバンク『生成AIの活用状況調査』2024年8月)。数字が示すのは、現場中心・非IT寄りの業界ほどAIが後回しになってきた実態だ。
このゲンバフォトAIとゲンチョウAIが狙うのは、まさにその層になる。新しいアプリの操作を覚え直すのではなく、現場でいつも撮っている写真、調査でいつも取っているメモという既存の業務データを、そのままAIに渡す設計だ。入口が「これまでの仕事のやり方」に寄っているぶん、現場が止まりにくい。当社が群馬の中小に伝えてきた「一業務に絞って、小さく始めて、前後を測る」という型とも噛み合う。

使う前に決めておく三つのこと
便利な道具ほど、任せる範囲を先に決めておかないと後で困る。導入前に、次の順で線を引いておきたい。
- 反復が多く、判定基準の決まった1業務から始める。写真整理と調査記録を同時に回さず、どちらか片方に絞る。効果が見えてから広げれば十分だ。
- 入口と出口の関所を決める。入口では、施主名・住所・金額など外に出したくない情報の扱いを先に決める。出口では、AIが作った台帳や調査シートはあくまで下書きと割り切り、確定は人が原本と突き合わせて行う。
- 前後を数字で測る。今の1件あたりの作業時間を控えてから導入し、1か月後に同じ物差しで比べる。感覚ではなく数字で、続けるか広げるかを決める。
正直な話、どこまで減るかは「やってみないと分からない」
気をつけたいのは、削減時間の数字が公表されていない点だ。CONOC自身も「削減される作業量や効果は、ご利用状況・現場の条件により異なります」と但し書きを添えている。だから「導入すれば◯時間減る」という前提で判断しないほうがいい。ゲンチョウAIの初期対象も工務店と内装・リフォーム工事で、すべての業種にいきなり対応するわけではない。動作の前提もCONOC建設業クラウドの利用になる。まず自社の1業務で前後を測り、効いた分だけ横に広げる。この順番を崩さなければ、外れても痛手は小さい。
まとめ
ゲンバフォトAIとゲンチョウAIは、現場が「これまで撮ってきた写真・取ってきたメモ」をそのまま渡すだけで、記録の下書きまで済ませてくれる。AIが下書きを作り、人は確認だけにする。派手な新技術というより、現場の事務仕事を静かに肩代わりする道具だ。まず1業務に絞り、入口と出口の関所を決め、前後を数字で測る。この進め方は、CONOC以外のAI活用にもそのまま使える。
「うちの現場のどの作業からAIに任せられるか」を一緒に見極めたい建設・工務店の方は、当社のAI・DX導入支援までご相談ください。群馬の中小の現場に合わせて、小さく始めて数字で測る形で伴走します。



