アンケートの自由回答が数百行。1件ずつチャットに貼って「これは緊急か通常か」を分類していくと、それだけで午前がつぶれます。表計算のなかで完結させたい、というのが本音のはずです。Googleスプレッドシートの =AI() 関数を使うと、セルに書いた指示を表の全行へまとめて適用できます。要約も、分類も、感情の判定も、列を1本足して範囲を生成するだけで回ります。対象プランなら追加費用なしで、明日そのまま試せます。この記事では、どう操作して、どのプランで使えて、まずどの1業務から入れば時短を測れるかまでを順番に説明します。
セルに =AI() と書き、範囲を選んで「生成」する

使い方はシンプルです。分類したいセルの隣に、こう書きます。
=AI("この問い合わせを 緊急 / 通常 / 低 のどれかに分類して", B2)
第一引数に「何をしてほしいか」を日本語で書き、第二引数に処理したいセルを指定します。ただし、数式を書いただけでは結果は出ません。その数式を下の行へコピーして列に並べたあと、AI関数が入ったセル範囲を選び、「Generate and insert(生成して挿入)」をクリックします。この操作ではじめて、選んだ範囲の判定がまとめて生成され、セルに書き込まれます。あとから内容を作り直したいときは「Refresh and insert(更新して挿入)」を押します(AI 関数の使い方・公式ヘルプ)。
一度に生成できるのは、選択したうちの先頭350セルまでです。B2からB300までの問い合わせ本文なら1回の操作で足りますが、それを超える行数は、次のかたまりを選んで「生成」を繰り返します。数式を書く → 範囲を選ぶ → 生成する、この3手を覚えれば、あとは行数が違うだけです。
ここが汎用チャットとの分かれ目です。チャット画面は1件ずつ貼って1件ずつ受け取る作りで、300件あれば300回の往復になります。=AI() は既存の表にそのまま列を足し、範囲をまとめて生成できるので、1件ずつ貼り直す手間が消えます。事務の定型作業に効くのは、この「表のまま数を裁ける」ところです。
できること——要約・分類・感情分析、そして最新情報の参照

Google公式のヘルプでは、=AI() の用途としてテキスト生成・要約・分類・感情分析が挙げられています(AI 関数の使い方)。実務に落とすと、たとえばこうなります。
- 長い問い合わせ本文を1文に要約して一覧にする
- 自由回答を「不満 / 要望 / 称賛」に分類して集計しやすくする
- レビューの文面から感情(肯定・中立・否定)を判定する
Google検索と連携させれば、表のなかからリアルタイムの情報を引くこともできます。固定の知識だけでなく、いま調べたい語を差し込んで参照させる使い方です。
周辺の機能も進んでいます。「Fill with Gemini」は、数行だけ手で埋めるとパターンを読み取って、残りの空欄を自動で補完します(2026年4月・公式アップデート)。手入力の約9倍の速さで埋まったという紹介もありますが(funnel-ai.jp)、この数字は一媒体の紹介値で、表の中身や列の数で大きく変わります。自社の表で前後を測って判断してください。さらに「来月の管理表を作って」と一言頼めば、列構成や書式まで含めた表のたたき台を生成させることもできます。
使えるのは Business Standard 以上——プランと上限を先に確認する
ここは始める前に必ず確認してください。=AI() は、すべてのWorkspace契約で無条件に使えるわけではありません。
Business Starter は対象外です。StarterのGeminiはGmail中心のAI補助にとどまり、Sheetsを含むコアアプリでは=AI()が載りません。スプレッドシートで表を一括処理したいなら、Business Standard 以上が入口になります(Business Standard / Business Plus / Enterprise Standard / Enterprise Plus)。2025年1月以降、これらのプランではGeminiがコアアプリに追加費用なしで組み込まれています。
もう一つ、利用上限も見ておきます。Sheetsの=AI()には月あたりの呼び出し回数の上限があり、通常は月5,000回、AI Expanded Accessを付けると月25,000回まで引き上がります(AIの利用上限について・公式ヘルプ)。このAI Expanded AccessもBusiness Standard以上が対象で、Starterは含まれません。数千行を毎月まわす想定なら、上限に当たる前にどちらのラインで運用するかを決めておくと安全です。プロモーション期間やアドオンの構成は変わりうるので、契約前に管理コンソールで自社プランの状態を一度確認してください。
中小の実務での効きどころ——まず「行数の多い定型判定」1業務から

機能が広いぶん、あれもこれもと手を広げると測定不能になります。入口は「行数が多くて、判定の基準が決まっている1業務」に絞るのが結局いちばん速い、というのが当社がDX支援で繰り返し感じるところです。具体的にはこのあたりです。
- アンケート自由回答を「不満 / 要望 / その他」に仕分ける
- 問い合わせログに「緊急 / 通常 / 低」の優先度を付ける
- 商品レビューの感情を判定して、否定が多い商品を洗い出す
いずれも人がやると単調で、しかも量がある作業です。まず1業務でAIに列を1本足し、手作業のときと比べて何分減ったか、判定がどれだけ合っていたかを測ります。時短と精度の2つを数字で押さえてから、次の業務へ広げます。最初から全社展開を狙わず、1業務の前後比較で足場を作るやり方です。
ExcelしかないチームでもAIの入口はあります。Copilotや、ChatGPTのスプレッドシート連携で近いことができます。まずは自社の表がどちらの環境にあるかを確認してから、入口を選んでください。
投入する前と、AIが返した後にやること
表データを扱う以上、運用の順番だけは崩さないでください。ここを飛ばすと、時短のつもりが後始末で相殺されます。
投入する前。取引先名・個人名・口座や金額といった生のデータは、AIに渡す前に落とすか仮名に置き換えます。分類や要約は、固有名詞を伏せても要点だけで成り立ちます。表を丸ごとかけるより、判定に必要な列だけを渡すほうが精度も上がります。
AIが返した後。=AI()の出力は下書きです。分類ラベルや感情の判定は取り違えが混じります。客先に出す集計や、金額・件数が絡む数字は、人が原本と突き合わせてから最終確定させます。精度が6割から7割の段階でも、人が最後に見る前提なら十分に時短の道具として使えます。全部を自動で通そうとせず、判断の1段を人に残すのが安全な線引きです。
まとめ
- Googleスプレッドシートの =AI() は、数式を書いて範囲を選び「Generate and insert」で生成すると、表の全行へまとめて適用でき、要約・分類・感情分析を1列で回せる(1回の生成は先頭350セルまで)。既存の表にそのまま列を足せるのが、汎用チャットとの違い
- 使えるのは Business Standard 以上。Starterは対象外。Sheetsの月上限は通常5,000回、AI Expanded Accessで25,000回。契約前に自社プランを確認する
- 入口は「行数が多く判定基準が決まった1業務」1つに絞り、時短と精度を測ってから広げる。投入前に機密を落とし、出力は人が原本照合で最終確定する
まずは手元の自由回答リストで、隣の列に =AI() を書いて範囲を1回生成してみてください。「うちのこの表なら、どの作業に使えるか」を一緒に見立てたくなったら、お問い合わせから一言もらえれば、ククルデザインが群馬の中小企業さま向けに入口の1業務から設計します。



