「営業にAIを入れたい、でもどこから」で止まっている会社へ
群馬の中小の社長さんと話していると、生成AIの話題はほぼ必ず出ます。ただ、その次に続くのは決まって「うちの営業に入れたいんだけど、何から手をつければいいか分からない」です。ツールは契約した、アカウントも配った、でも現場は今までどおり。よくある光景です。
つまずく原因の多くは、入れ方が「全社一斉」になっていることにあります。営業のプロセス全部を一度にAI化しようとして、覚えることが多すぎて誰も使わなくなる。各社の実務ガイドが口をそろえて指摘するのも同じで、うまくいっている現場は「痛い1工程」だけを選んで、そこから始めています。この記事では、その1工程の選び方と、明日そのまま試せるプロンプトの型、3ヶ月で次に広げるまでの回し方を書きます。
全部いっぺんに、はなぜこける

営業の仕事は、見込み客のリストアップ、下調べ、アポ取り、商談準備、提案書づくり、議事録、フォローメール…と細かい工程の連続です。ここに一気にAIを差し込むと、担当者は「どの場面でどう使うのか」を10個も20個も覚えることになります。人は覚えることが多いと、結局いつものやり方に戻ります。
私たちがAI導入の伴走で最初にやるのは、この逆です。工程を全部書き出して、その中から一番時間を食っていて、しかも毎回だいたい同じ手順でやっている工程を1つだけ選ぶ。前に別の記事でも書いたとおり、AIは「全員に汎用ツールを配る」より「1つの決まった業務に貼り付ける」ほうが効きます。営業でその入口になりやすいのが、商談前の準備です。
まず「商談準備」を1本のプロンプトに固定する
商談準備は、相手企業の下調べ・想定質問の洗い出し・提案書のたたき台づくりが中心です。担当者ごとにやり方も時間もバラバラで、営業が得意な人ほど「勘」でやっているため、若手に引き継げません。ここをコピペで使える1本のプロンプトに固定します。
たとえばこんな形です。会社名や商材を入れ替えるだけで毎回使えます。
あなたは法人営業の準備担当です。これから訪問する「(相手企業名・業種・規模)」との初回商談に向けて、次を出してください。1.相手企業が今抱えていそうな課題の仮説を3つ、2.商談で聞くべき質問を5つ、3.当社の「(自社の商材)」を提案する場合の切り口を2案。各項目は箇条書きで、営業が読んで30秒で頭に入る長さにしてください。
営業向けプロンプトの実務ガイド(genai-ai.co.jp、uravation.com)では、商談準備や提案書のたたき台づくりをこうしたテンプレに寄せると、下調べや整形にかけていた時間がまとまって減ると紹介されています。ただし、これらのガイドが挙げる「何倍速」「週◯時間削減」といった数字は各社が自社の現場で出した例で、対象企業も測り方も明記されていないものが多く、そのまま自社に当てはまるとは限りません。他社の数字は参考程度にとどめ、自社で「今この作業に何分かかっているか」を先に測ってから比べてください。
プロンプトの「基本の型」を社内標準にする

1工程を決めたら、次はプロンプトの書き方そのものを社内でそろえます。ここがバラつくと、同じツールを使っても人によって出てくる質が全然違い、「AIは使えない」という結論になりがちです。押さえる型は2つだけで十分です。
- 最初に役割を与える:「あなたは法人営業の準備担当です」「あなたは製造業の見積担当です」と一言足すだけで、答えの精度と語り口が安定します。
- 出力の形を先に指定する:「箇条書きで」「表で」「300字以内で」「そのままメールに貼れる文面で」と、欲しい形を先に伝える。整形のやり直しが消えます。
この2つを「うちの営業のプロンプトはこう書く」と決めて、テンプレを1枚の紙かチャットのピン留めにしておく。属人化していた作業が、新人でも同じ品質で回せる作業に変わります。
3ヶ月で「次の工程」に広げる回し方

1工程が回り始めたら、そこで止めずに測って次へ広げます。全社一斉でこけないための、地味だが効く手順です。
- 1ヶ月目:商談準備の1工程だけ、選んだメンバー数人で回す。始める前に「この作業に今どれくらい時間がかかっているか」を控えておく。
- 2ヶ月目:かかった時間を計測して比べる。減った時間と、質が落ちていないかを確認する。うまくいっていればチーム全体に広げ、テンプレを微調整する。
- 3ヶ月目:次に痛い工程(フォローメールの下書き、議事録の要約など)を1つ選び、同じ「固定→計測」の流れをもう一周させる。
肝は、感覚で「効いてる気がする」で終わらせないことです。削減した時間を数字で持っておくと、次にどこへ広げるかの判断材料になり、社内で「AIに投資する意味があるか」を説明するときの根拠にもなります。
始める前に決めておく2つのこと
手軽に始められる分、先に線引きだけしておきます。
- 何を入力していいかを決める:相手企業の非公開情報や個人情報、未公開の見積などを生成AIに貼るかどうかは、使うツールの契約プランと設定によって扱いが変わります。「入れていい情報・ダメな情報」を1枚にして共有してから始めてください。
- 出力は人が必ず通す:AIが出した課題仮説や提案の切り口は、たたき台です。相手に出す前に営業担当が目を通し、事実と温度を整える。ここを省くと、それらしいが的外れな提案がそのまま出ていきます。
「うちのどの工程から」を一緒に決めます
ここまでの要点を3つに絞ります。
- 全社一斉ではなく、一番時間を食う「痛い1工程」を1つだけ選んで始める。営業なら商談準備が入口になりやすい。
- その工程をコピペで使える1本のプロンプトに固定し、「役割を与える」「出力形式を先に指定する」の2つの型を社内標準にする。
- 削減した時間を計測し、それを根拠に次の工程へ1つずつ広げる。感覚で終わらせない。
営業に生成AIを入れる最短ルートは、高いツールを契約することではなく、痛い1工程を選んでプロンプトを固定し、減った時間を測ることです。初期費用はほぼゼロで、明日から試せます。
ククルデザインは群馬の中小企業向けに、この「最初の1工程をどこにするか」の見極めから、プロンプトの標準化、計測して次へ広げるところまでを伴走しています。自社の営業や営業事務のどこが一番痛いか分からない、という段階でかまいません。お問い合わせから、まずは1工程だけ一緒に選ぶところから始めましょう。



